先延ばし癖は怠惰ではなく、恐怖である
「明日やればいいや」今日もこうつぶやきながら、大事なことを先延ばしにしていませんか?締切の3日前には「時間は十分ある」と思っていたのに、締切前夜になってやっと冷や汗をかきながら慌てて仕事を処理するパターン。一度や二度ではなく、毎回繰り返されるのに直らないこの習慣。周りからは「怠け者だ」「意志が弱い」と言われますが、本当にそれだけでしょうか?
先延ばし癖、つまりprocrastinationは単なる怠惰や時間管理能力の問題ではありません。その裏には、私たちが気づいていない心理的な恐怖が隠れているのです。
先延ばしの本当の理由:失敗が怖い
多くの人が仕事を先延ばしにする本当の理由は「失敗への恐怖」です。始めれば結果が出て、その結果が期待に届かないのではないかと心配になります。「最善を尽くしてもダメだったらどうしよう」という不安が無意識に働いているのです。
例えば考えてみましょう。転職のために履歴書を書かなければならないのに、ずっと先延ばしにしているケースを。本当に履歴書を書くのが大変だからでしょうか?それとも「自分の経歴が足りなかったらどうしよう」「落ちたらプライドが傷つく」という恐怖のせいでしょうか?後者である場合がはるかに多いのです。
始めなければ失敗もしませんから。先延ばしは一種の心理的な防御壁です。「まだ始めてもいないから失敗したわけじゃない」と自分を慰めているのです。
完璧主義者ほど先延ばしにする
興味深いことに、怠け者よりも完璧主義傾向の強い人の方が仕事を先延ばしにするという研究結果があります。完璧にやりたいのに、完璧にできる自信がないから、そもそも始めないのです。
「今始めたらちゃんとできない気がする。コンディションがいい時にやろう」
「資料をもう少し集めてから始めれば完璧にできる」
こんな考え、心当たりがありませんか?これは完璧を追求しているように見えますが、実際には「不完全な自分」と向き合いたくない回避心理なのです。
評価されることへの恐怖
学生時代を思い出してみてください。試験勉強を一夜漬けでやった経験、ありますよね?「時間がなくてちゃんとできなかった」という言い訳を事前に作っているのです。十分に準備したのに結果が悪ければ「自分の能力が足りない」と認めなければなりませんが、時間が足りなかったなら「時間さえあればうまくいったのに」と思えますから。
これを心理学では「セルフ・ハンディキャッピング(self-handicapping)」と呼びます。自ら障害物を作って、失敗した時の衝撃を減らす防衛機制です。
不安を減らそうとして不安が大きくなる逆説
先延ばしは短期的には不安を減らしてくれます。「今日はやらなくていい」と思えば、その瞬間は楽になりますから。しかし長期的にはかえって不安を大きくします。締切が近づくにつれプレッシャーは増し、「今回もまた先延ばしにしちゃった」という自責の念まで加わります。
そしてこのパターンが繰り返されると「私は元々こういう人間だ」というアイデンティティとして固まってしまいます。「私はいつも締切前夜にやるタイプだ」と自分を規定するようになるのです。そうすると先延ばし癖から抜け出すのがさらに難しくなります。
先延ばし癖、こう見つめてみましょう
先延ばし癖を直したいなら、まず自分を責めないでください。「なんでこんなに怠けてるんだろう」「意志が弱い」と自責する代わりに、「今、私が恐れているのは何だろう?」と問いかけてみてください。
- 完璧にできないことが怖いですか?
- 他人の評価が気になりますか?
- 失敗したら自尊心が崩れることが心配ですか?
恐怖を認めるだけでも、先延ばしパターンは少しずつ弱まります。
そして「完璧な結果」より「とりあえず始めること」に焦点を合わせてみてください。5分だけやってみる、下書きを適当に書いてみるなど、とても小さな単位に分けて始めるのです。始めさえすれば、思ったより続けられることが多いものです。
自分を理解することが第一歩
先延ばし癖は性格の問題ではありません。恐怖と不安に対処する一つの方法に過ぎないのです。その恐怖が何なのかを理解し、自分に少しだけ優しくなること。それが先延ばしパターンから抜け出す第一歩です。
今日、先延ばしにしてきたあのこと。完璧にやろうとせず、ただ5分だけ始めてみるのはどうでしょうか?